毎日の眉メイクにかかる時間を短縮したい、すっぴんのときでも整った眉を維持したいという理由から、眉毛アートメイクを検討する方が増えています。しかし、アートメイクは一度施術を受けると長期間にわたりデザインが維持されるため、メリットだけでなくデメリットや潜在的なリスクを正しく理解しておくことが極めて重要です。この記事では、眉毛アートメイクのデメリットや失敗を防ぐための対策について、客観的な視点から詳しく解説します。
そもそも眉毛アートメイクとは?タトゥー(刺青)との違い
アートメイクとは、専用の非常に細い針を用いて皮膚の極めて浅い層(表皮)に色素を注入し、落ちない眉を描く施術です。これに対し、タトゥー(刺青)は皮膚の深い層(真皮)に色素を注入するため、半永久的に色が残り続けます。アートメイクは表皮に施術を行うため、肌の新陳代謝であるターンオーバーに伴い、一般的に1年から3年程度で徐々に色が薄くなっていくのが特徴です。このように、時間の経過とともに薄くなる点と、色素を注入する皮膚の深さがタトゥーとの大きな違いになります。
また、アートメイクは針で皮膚に傷をつけて色素を注入する侵襲行為にあたるため、日本の法律上、医師または医師の指示を受けた看護師のみが行える医療行為と定められています。
施術方法には、ペン型の器具を用いて1本ずつ手作業で細かい傷をつくり、自然な毛並みを表現する「手彫り法」と、高速で動く針が付いた専用の機械を用いて色素を注入する「マシン彫り法」などがあります。手彫り法はナチュラルな質感が得られやすく、マシン彫り法は施術時間が比較的短く、痛みも抑えられる傾向があると言われています。なお、市販されている「眉ティント」は数日から1週間程度で徐々に色が薄れていく一時的な着色化粧品であり、皮膚の内部に色素を注入する医療行為であるアートメイクとは、仕組みも持続期間も全く異なります。
【医師が解説】眉毛アートメイクの主なデメリット9選
眉毛アートメイクには多くのメリットがある反面、医療行為としての性質や色素の残存性によるデメリットが存在します。後悔のない選択をするために、以下に示す9つのデメリットについて十分に確認しておきましょう。
1. 一度入れると簡単には消去・修正が難しい
アートメイクは時間の経過とともに徐々に薄くなるとはいえ、施術直後や色素が定着した後に「デザインを変更したい」「元に戻したい」と思っても、すぐに消したり修正したりすることは極めて困難です。形を大きく変えたり色を除去したりするには、医療機関においてレーザー治療などを受ける必要がありますが、これにはさらなる期間や費用がかかり、肌にも負担がかかります。
2. 時間の経過とともに変色・色あせする可能性がある
時間の経過やターンオーバーによって色素が徐々に退色する過程で、元の色がそのまま均一に薄くなるのではなく、インクの成分によってはオレンジがかった色やグレーのような色に変色して皮膚に残ることがあります。古い色が不自然に残った上から新しい形を重ねて施術を行うと、色素が混ざり合って不自然な色合いに仕上がるリスクもあります。
3. 施術時に痛みを感じることがある
専用の針で皮膚に傷をつけるため、施術中に痛みを感じる場合があります。痛みの程度には個人差がありますが、一般的には施術前に表面麻酔(クリームタイプなど)を塗布することで痛みを和らげる対策が取られます。医療機関によっては痛みの状況に合わせて局所麻酔などの追加対応を行うこともありますが、事前の確認が必要です。
4. ダウンタイムがあり、行動が一部制限される
施術後には、傷ついた皮膚を修復するためのダウンタイムが約1週間あります。この期間中は、施術部位に赤み、腫れ、軽度のかさぶた、ヒリヒリ感などが現れることがあります。また、色素をしっかりと定着させ感染を防ぐため、施術後24時間は患部を濡らさないようにするほか、1週間程度は眉メイク、激しい運動、長時間の入浴、飲酒などを制限する必要があります。
5. 理想のデザインに仕上がらない可能性がある
施術者の技術や経験値の違い、あるいは個人の肌質や骨格、筋肉の動きによって、色素の定着度合いや左右のバランスにばらつきが生じ、事前シミュレーション通りの仕上がりにならないケースがあります。特に、仕上がった後に「太すぎる」「濃すぎる」と感じてもすぐには直せないため、施術者との細かなニュアンスの共有が大切です。
6. 肌トラブルや感染症のリスクがある
針を用いて皮膚を傷つけるため、施術部位に雑菌が侵入すると、毛穴の奥で炎症が生じる毛包炎や、黄色ブドウ球菌による皮膚のただれ(膿痂疹)などの肌トラブルが生じる可能性があります。傷が治りにくい体質の方や免疫力が低下している方は特に注意が必要です。医療機関では使い捨ての器具を使用するためリスクは低く抑えられていますが、不衛生な環境での施術は感染症のリスクを高めます。
7. 複数回の施術が必要で費用がかかる
アートメイクは、1回目の施術だけでは色素が約20〜30%程度しか定着しない傾向にあります。一般的には、1回目で全体の土台を形成し、期間をあけて2回目の施術で微調整やデザインの完成を行うため、複数回の通院を要します。また、自由診療に該当するため費用は医療機関によって異なります。良好な状態を保つためには、1年から1年半程度の間隔でリタッチを繰り返す必要があり、その都度費用がかかります。正確な費用は施術内容によって変わりますので、受診時にお尋ねください。
8. 使用する色素によってはMRI検査が受けられない場合がある
アートメイクで使用するインクには、微量の金属成分が含まれている場合があります。MRI検査は非常に強力な磁石を使用するため、インク中の金属が反応して施術部位に熱感やピリピリとした痛みを感じたり、画像の写りに影響を与えたりすることがあります。インクの金属含有量が多い場合や、各病院が設けている独自ルールによって、MRI検査の対象外とされるケースもあるため、事前にインクの性質を確認しておく必要があります。
9. 施術後に自己処理が必要な場合もある
アートメイクは皮膚に着色を行うものであり、眉毛の毛根に働きかけて脱毛させたり、逆に発毛を止めたりするものではありません。そのため、デザインされたきれいな眉の形からはみ出して生えてくるムダ毛や、伸びてきた眉毛の長さは、施術後もシェーバーや毛抜きなどを用いて定期的に自己処理する必要があります。
デメリットだけじゃない!眉毛アートメイクのメリット
さまざまなデメリットや注意点を解説してきましたが、それらを上回る優れたメリットがあるからこそ、多くの方に選ばれています。主なメリットを以下に紹介します。
メイク時間を短縮できる
朝のメイク時に最も時間や神経を使うと言われる眉のデザインがあらかじめ完成しているため、パウダーを軽くのせる程度で簡単に眉メイクが仕上がります。これにより、毎日のメイク時間を大幅に短縮でき、忙しい朝の負担が軽減されます。
汗や水に強くメイク崩れを気にしなくてよい
皮膚自体に着色しているため、スポーツやプール、温泉、あるいは夏の暑い季節などで大量の汗をかいたり水に濡れたりしても、眉毛が消えてしまう心配がありません。一日中きれいな状態を維持できます。
すっぴんに自信が持てる
メイクを落としたお風呂上がりや起床時、急な外出が必要になった際にも、自然で整った眉が残っているため、素顔の印象がぼやけず、自分自身の容姿に自信を持ちやすくなります。
左右対称の整った眉をキープできる
骨格や筋肉の動きに合わせて、プロの視点からミリ単位で調整された理想的な左右対称の眉を維持できます。自分の手だけでは再現が難しいバランスの良い眉を、長期間安定して保つことができます。
失敗リスクを最小限に!後悔しないための5つの対策
施術後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、リスクをコントロールするための具体的な対策を講じましょう。
1. 必ず医療機関(クリニック)で施術を受ける
日本国内におけるアートメイク施術は、医師または医師の指導を受けた看護師のみに許可された医療行為です。適切な衛生管理やトラブル発生時の医療対応が迅速に行える医療機関を選択することが、安全性を高めるための前提となります。美容サロン等での不適切な施術による被害を避けるためにも、クリニック選びは慎重に行ってください。
2. 施術者の技術力や症例実績を確認する
仕上がりの完成度は、担当する施術者の技量に大きく依存します。クリニック全体の症例実績だけでなく、担当施術者の過去のデザイン写真や保有する技術ライセンス、得意とするスタイルなどを事前に確認し、希望するナチュラルな眉を再現できるかどうかを見極めることが重要です。
3. カウンセリングで納得いくまで相談する
施術前のカウンセリングでは、自分の希望するデザインをしっかり伝えるとともに、骨格や表情のクセを考慮した細かな調整を求めましょう。仕上がりのイメージだけでなく、万が一仕上がりに満足できなかった場合の対応や修正方針、退色時の予測についても納得できるまで説明を求めてください。
4. 施術前後の注意点を守る
施術前の約1ヶ月間は、本来の眉毛の生え方や毛流れを活かしたデザインを描くため、自己処理を控えてできるだけ自眉を伸ばした状態で施術に臨むことが望ましいとされています。また、日焼けは皮膚のターンオーバーを早め、色素の定着を悪くさせるため、施術前後は過度な日焼けを避け、施術部位への日焼け止めの使用は施術後1週間程度経過してから行うようにしてください。
5. 適切なアフターケアを行う
施術後は、医療機関から指示された軟膏(ワセリンなど)を塗布し、施術部位を乾燥から保護します。また、傷口をこすったり無理にかさぶたを剥がしたりせず、皮膚の自然な治癒を待つことで、色素の定着が促され、肌トラブルを防ぐことにつながります。
眉毛アートメイクの施術が受けられないケース
アートメイクは針を皮膚に通す侵襲行為を伴うため、体質や健康状態によっては施術を受けられない、あるいは施術を延期せざるを得ない場合があります。以下に代表的なケースを挙げます。
- 妊娠中、授乳中、または妊活中の方
- 重度のケロイド体質、アトピー性皮膚炎、または施術部位に重度の化膿したニキビや傷がある方
- 重度の糖尿病、心疾患、感染症、自己免疫疾患などの持病がある方
- 抗凝固療法(血液をサラサラにする薬の服用)を受けられている方
- 免疫抑制状態にある方、単純性ヘルペスの症状がある方
これらの状況に該当する恐れがある場合は、必ず施術前に医師へ申告し、適切なアドバイスを受けてください。
眉毛アートメイクに関するよくある質問
眉毛アートメイクに関して、カウンセリング時に多く寄せられる質問をまとめました。
Q. 施術の流れを教えてください。
一般的な医療機関における流れとして、まず医師による丁寧な診察と、施術者によるカウンセリングを行います。その後、患者様の骨格や顔立ちに合わせた緻密なデザイン決定(デッサン)を行います。次に、麻酔を施して十分に効いたことを確認したうえで、施術(手彫りまたはマシン彫りなど)を開始します。施術が終了したら、クーリングや保護軟膏の塗布、および自宅でのアフケア方法の説明を受けて終了となります。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
眉毛アートメイクは保険適用外の自由診療となるため、費用は医療機関によって異なります。施術者の経験や役職(ランク)、提供する技術手法によっても料金が異なる場合がありますので、具体的な料金表やプランについては、受診を検討している各医療機関へ直接お尋ねください。
Q. 施術の痛みはどの程度ですか?
痛みの感じ方には個人差がありますが、一般的には皮膚の表面に麻酔薬(麻酔クリームなど)を塗布して感覚を鈍らせてから行うため、施術中の痛みは緩和されやすいと言われています。麻酔を塗る際自体の痛みはありません。また、必要に応じて注射によるブロック麻酔が用いられることもあります。注射による麻酔は、刺すときにチクっとした痛みがあるものの、その後の施術中の痛みはより出にくくなるという特徴があります。
Q. 失敗した場合、アートメイクの除去はできますか?
もしデザインや色にどうしても満足がいかなかった場合、色素を薄くするためのレーザー照射治療や除去用の薬剤を用いた施術を受けることは可能です。ただし、これらの除去治療は、アートメイク施術から少なくとも1か月以上の期間をあけ、皮膚の傷や状態が完全に回復してからでなければ開始できません。また、完全に消し去ることが難しい場合や、複数回の通院と追加の費用が必要になる点にご留意ください。
まとめ
眉毛アートメイクは、朝の忙しい時間を短縮でき、あらゆる場面ですっぴんの美しさをキープできる非常に優れた施術です。しかし同時に、容易に消去できないこと、ダウンタイムや痛みがあること、将来的な変色やMRI検査時の注意点など、医療行為としてのデメリットやリスクも持ち合わせています。これらの注意点を正しく理解し、信頼できる医療機関で経験豊富な施術者と十分に話し合ったうえで判断することが、理想の眉を手に入れ、後悔のない選択をするための極めて重要なポイントです。
本記事は一般的な情報の提供を目的としています。詳しい診療内容・費用に関しては当サイトのページをご参照ください